給湯器で利用できるガスは、「都市ガス」と「LPガス(プロパンガス)」の2種類です。ガスの種類によって給湯器も専用のものを選ばなければならなりませんが、都市ガスとプロパンガスの具体的な違いについてはわからないという方も多いのではないでしょうか。
この記事では、都市ガスとLPガスの違い、注意点について解説します。
給湯器は自宅で使用しているガスの種類にあわせて選びましょう
現在、家庭用の熱源として使われているガスの種類は、大きく分けると都市ガスとLPガスの2種類です。専用の容器で供給されているLPガスは、日本中どこでも同じ成分ですが、都市ガスはいくつかの種類に分かれています。ガスの組成が異なるため使用できる機器が違うことに加え、配給エリアや火力の違いがあります。
給湯器を含むガス機器は、使用できるガスの種類が決まっています。このため、給湯器を選ぶ際は自宅に引かれたガス種にあわせた機器を選ぶことが必要があります。
ガスの組成自体が異なるため、都市ガスの場合は都市ガス用給湯器、LPガスの場合はLPガス用給湯器を選ぶ必要があります。対応外のものを設置すると不完全燃焼や、爆発などの恐れがあり危険です。
ガスの組成について、次の項目で詳しく説明します。
都市ガスの特徴
都市ガスは、地面や道路の下など地下に張り巡らされたガス管を通じて各家庭に供給しています。ガスを送る道管を設置するには莫大な初期費用がかかるため、人口がある程度集中している地域でないと初期費用を回収することができません。そのため、都市ガスは都市部など住宅が密集している地域に多く見られます。
都市ガスについて、主成分などのガスの組成や供給方法、供給エリアや料金の差などの特徴について解説します。
空気より軽い
都市ガスは、メタンが主成分の天然ガスです。メタンの空気に対する比重は0.55のため、都市ガスは空気より軽く、漏れた場合は天井付近にガスがたまります。都市ガスは現在、熱量に応じて7つのグループに分けられています。都市ガスは無味無臭ですが、ガス漏れに気づきやすくするため臭いづけがされています。
供給方法
都市ガスは、道路や地面の下のガス管を通じて供給されます。ガス管を家屋まで引きこむ工事などのガス管埋設工事費用は、契約者の負担です。このため、都市ガスを利用するためにはイニシャルコストがかかることが知られています。
供給エリアが限られている
都市ガスの契約を行い、ガス管を家屋まで引き込むと自動的に供給が可能です。一方で、道路にガス管が通じているエリアでしか都市ガスは供給されません。このため、人口がある程度集中している都市部が主な配給エリアです。都市ガスが近くまで通っていないエリアの場合は、利用が難しいです。
販売会社による料金の差が少ない
都市ガスの料金は政府の許可が必要な「規制料金」でしたが、2017年4月に市場が自由化されました。自由化に伴い、料金の規制はなくなったものの、以前の規制料金と大幅に違う料金設定をしているガス会社はないようです。そのため、都市ガスの場合は契約する会社によって料金幅がほとんどないことがメリットと言えるでしょう。
LPガス(プロパンガス)の特徴
LPガス(LPG)とは、「Liquefied Petroleum Gas(液化石油ガス)」の頭文字をとった略称です。LPガスの主成分は、プロパンとブタンです。
主成分のほとんどがプロパンのため、プロパンガスとも呼ばれています。ただし、ガス器具の製品情報やメーカーサイト、公的機関などでは、正式名称と言える「LPガス」の呼称が一般的です。
LPガスについて主成分などのガスの組成や熱量の違い、供給方法、供給エリアなどの特徴について解説します。
空気より重い
LPガスの主成分は、プロパンとブタンです。プロパンの空気に対する比重は約1.5倍、ブタンは約2.0倍です。そのため、LPガスは総じて空気より重く、ガス漏れが起こると床など低い場所に溜まります。LPガスも都市ガスと同様に無色無臭なので、ガス漏れに気づきやすくするために臭いづけがされているのが特徴です。 万が一ガスが漏れた際は、特に下方の風通しを良くし、ガスを屋外に出すようにしてください。
熱量が都市ガスに比べて高い
都市ガスの熱量 (カロリー)は約11,000kcalであるのに対し、LPガスの熱量は約24,000kcalと2倍以上の差があります。発熱量の大きいLPガスはより少ない量でお湯を沸かすことができるということになります。建物の近くにガスボンベを設置する形で供給するので、災害に強いのも特徴の1つです。
家庭用の火力はガス機器によって決まっているため、機器の火力が3kwと記載されていれば、都市ガスもLPガスも同じ3kwの火力となるのでガスの種類によって火力は変わりません。
供給方法
液化石油ガス(LPガス)が入ったボンベを業者が自宅まで配送し、ガスメーターを経て家庭で使用します。各地域にあるLPガス事業者と契約することで、ガスの切り替え工事や開栓工事が発生し、そのあと使用できます。ガス設備に関してですが、新設工事であればガスを使い続けることを条件に設備費用を負担してくれることが多いです。
LPガスボンベを事業者から供給してもらう
LPガスは、業者が専用のボンベに詰めたガスを配送することで使用が可能です。LPガスは通常は気体の状態ですが、主成分であるプロパンは‐42℃、ブタンは‐4℃に冷やす、または20℃の常温でプロパンは約0.8Mpa、ブタンは約0.2Mで加圧すると液化されます。このため、圧縮や冷却をすることで簡単に液化でき、250分の1の体積となるためボンベで輸送が可能です。
都市ガスとLPガス(プロパンガス) の見分け方
都市ガスとLPガスの特徴について解説しました。実際に使われているガス種がどちらかは、ガスボンベの有無やガスメーターの形状などをみればすぐに判別できます。これらの実際の見分け方について解説します。
ガスボンベの有無
都市ガスは、地下に埋められているガス管から各家庭へ供給されます。一方、LPガスはガスボンベが業者によって配送されることで使用が可能です。このため、ガスボンベがあればLPガス、なければ都市ガスが利用できるエリアです。
ガスメーターの形状
ガスメーターにも違いがあります。都市ガスのガスメーターは検針の数字部分だけです。一方でLPガスのメーターには、検針部分以外に液晶画面がついています。これはエラー内容を表示させるための液晶です。
ガス給湯器の機器情報
ガス給湯器の多くは、機器の情報がシールとして本体表面に貼られています。そこには型番や給湯能力、ガス消費量などの情報が記載されており、そのなかに都市ガスかLPガスのガス種が明記されているため判断が可能です。
ガス漏れ警報器の位置
ガス漏れ警報器の位置でもガス種を見分けることが可能です。都市ガスはメタンが主成分で空気より軽く、漏れると天井付近にたまります。このため、ガス漏れ警報器は天井や天井付近に設置されます。
一方でプロパンやブタンが主成分で空気より重いLPガスは、ガス漏れすると床にたまります。このため、LPガス用のガス漏れ警報器は床付近に設置されています。このように警報器の位置でガスを見分けられます。
まとめ
給湯器のガス種について解説しました。都市ガスとLPガスにはそれぞれ特徴があります。また、ガス種によって使用できる給湯器が違うため、給湯器を交換する際は使われているガス種を確認して対応する機器を選ぶことが必要です。
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