サステナブル(持続可能)な社会を目指すため、SDGs(持続可能な開発目標)を2030年までに達成する必要性が謳われています。SDGsの17の目標のひとつである「気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策」で注目されているのが、今回紹介する「給湯器」です。ここでは給湯器の中でも省エネ性能が高いとされる「エコジョーズ」について説明します。
エコジョーズとは
エコジョーズは、一般家庭で使用するガス給湯器の種類のひとつです。
給湯器にはほかにも、電気でお湯を作るタイプの給湯器(電気温水器)や石油(灯油)によって水を加熱する石油給湯器、ガス給湯器と電気温水器を合わせたハイブリット給湯器などがあります。
では、エコジョーズにはどのような特徴があるのでしょうか。
エコジョーズと従来のガス給湯器との違い
エコジョーズの「エコ」は、ひとつには「エコロジー(ecology)」を指します。
エコロジーは本来、生物学における分野「生態学」を指しますが、日本では「環境保護」「環境にやさしい」という意味で使われることが多くなりました。また、「エコ」は経済を意味する「エコノミー(economy)」の略称でもあります。
エコジョーズは従来のガス給湯器に比べて使用するガスの量が少なくて済み、効率よくお湯を沸かせます。省エネルギーの観点から、環境や家計に優しい「エコ」を実現した給湯器です。
エコジョーズのしくみ
従来のガス給湯器は、配管に水を通しながらガスバーナーによって熱することでお湯を沸かします。
ただし、その仕組みでは配管から多くの熱を空気中に逃がしていました。エコジョーズは従来の給湯器で捨てられていた燃焼ガスによる高温の排気熱を回収し、お湯を作るのに再利用します。エネルギーをできる限り無駄にしないことでさらなる効率化を図りました。
一例によると、従来タイプではお湯を沸かすときに出る高温の排気熱、約200℃を捨てていました。エコジョーズの場合は、従来捨てていた約200℃の燃焼ガスを再利用して水を温めます。
従来タイプの場合、一次熱交換器のみで水を温めます。
対して「潜熱回収型ガス給湯器」とも呼ばれるエコジョーズは、水を約200℃の燃焼ガスを再利用して二次熱交換器で温め、それを一次熱交換器に送り約1500℃でさらに加熱します。
この仕組みにより、従来と比較すると少ないガス消費量で効率よくお湯が沸かせるようになりました。
捨てる排気熱が従来は約200℃もあったのに対し、エコジョーズなら約50℃の排気熱で済み、非常に省エネルギー性に優れた仕組みといえます。
エコジョーズのメリット
エコジョーズは、熱効率が高いのが特徴です。
従来のガス給湯器が80%であるのに対し、エコジョーズは95%にもなります。光熱費が節約できるうえ、二酸化炭素の排出量は従来タイプより10%以上カットするため地球温暖化防止にもつながります。
エコジョーズには次のようなメリットがあります。
ガス料金を抑えられる
地域によってガス会社の料金体系は違いますが、一例では従来のガス給湯器をエコジョーズに変えることで10%以上削減されると試算されています。
ふろ給湯器(給湯・シャワー・追い炊きは可能、ガス式の床暖房なし)の場合、初期費用はエコジョーズが約2万5,000円高くなりますが、年間のガス料金は約7,800円安くなります。10年間で考えると、エコジョーズのほうがトータルで約5万2,000円もお得です。
なお、エコジョーズに交換する費用は戸建てかマンションにより異なります。ガスの料金体型も地域のガス会社で差があるため、詳細は該当のガス会社にお問い合わせください。
湯切れが起きない
エコジョーズは、湯切れが起きないことが特徴です。「潜熱回収型ガス給湯器」と呼ばれるように、従来は逃がしていた熱を再利用することにより二次熱交換器で水を温めます。
さらに、一次熱交換器に送って高温に加熱し、必要な分だけお湯を瞬間的に沸かせるため、湯切れする心配は要りません。
エコジョーズとは別のタイプに、1日分のお湯を深夜に沸かして大きなタンクに貯めておく貯湯タイプの給湯器もあります。こちらはタンクのお湯を使い切った場合はシャワーから水しか出なくなり、いわゆる「お湯切れ」の可能性があります。
貯湯タンクがなくコンパクト
エコジョーズは、必要なときに配管を通る水を加熱する瞬間湯沸かし式です。そのため、沸かしたお湯を貯めておく貯湯タンクは必要ありません。
一方、深夜電力を利用してお湯を沸かすタイプの給湯器は、貯湯するために大きなタンクが必要です。
また、屋外の空気から熱を集めてお湯を沸かすために使う熱交換器も場所を取ります。エアコンの室外機に近いイメージです。
深夜電力を利用するタイプの給湯器はタンクと熱交換器を設置する広さが必要で、庭やベランダを使わなければなりません。
対してエコジョーズは、10分の1程度の大きさなので設置する場所を自由に選ぶことが可能です。
補助金を利用できる可能性がある
従来型の給湯器からエコジョーズに交換する際、国や自治体の補助金を利用できる可能性があります。
エコジョーズの利用を検討中ならば、補助金の内容や申請期間などの情報にアンテナを張っておきましょう。
国はこれまでも給湯器に関して補助金制度を実施してきました。すでに交付を終了したものもありますが、新たに経済産業省より住宅の省エネ化を支援する補助制度『住宅省エネ2024キャンペーン』について、対象となる給湯器の基本要件が公表されました。
そのなかに、「既存賃貸集合住宅におけるエコジョーズ等の取替を支援する補助制度」が含まれています。
また都道府県によっては、ホームページ上でエコジョーズ(潜熱回収型給湯器)等の設置する際の補助金等交付について掲載していることがあります。
該当の自治体を確認してみましょう。
参考ホームページ
エコジョーズ専用プランを利用できる
補助金ではありませんが、ガス会社によって「エコジョーズプラン」などの割引プランを行なっているところもあるので活用しましょう。
たとえば、省エネ性が高く環境にやさしい高効率給湯器であるエコジョーズを使用している家庭を対象に、一般ガス料金から2%割引にする契約もあります。
内容は地域のガス会社によってさまざまです。すでにプランの契約期間を終了している場合もあるため、該当エリアのガス会社についてHPなどで確認することをおすすめします。
エコジョーズのデメリット
エコジョーズは省エネタイプであり、従来型の給湯器に比べて家計にも環境にも優しいのが特徴です。
しかし、一方ではデメリットもあります。とくに、構造上発生する「ドレン排水」についてはよく理解しておくことが必要です。
結露の排水経路が必要になる
エコジョーズは、従来型の給湯器で燃焼排ガスとして捨ててしまっていた熱をリサイクルすることで、熱効率を向上させます。
その構造上、従来は約200℃だった廃熱温度を約50℃まで下げることになります。廃熱温度が急激に下がると、水蒸気が凝結して結露が発生します。この結露による凝結水を「ドレン排水」と呼びます。
エコジョーズを1日中使用した場合、ドレン排水が約500~1,500ml排出されます。給湯器の周りが水浸しにならないよう、ドレン排水用の排水経路を作るなど対策を講じなければなりません。
「ドレン排水」に関しては、原則として下水道法で「汚水」とみなされるため、汚水系統の排水設備に流すことになります。
ただし、自治体によっては排出量が微量で水質が一定に保たれることから、雨水と同様の排水設備に流すことを認めている場合もあります。
自治体がドレン排水の取扱いをどのように定めているのか確認したうえで、工事を行なう必要があります。
ドレン排水を処理する工事は、戸建住宅とマンションによって方法が違います。
戸建住宅では、汚水系統の排水として扱う場合と、雨水系統の排水として扱う場合に大きく分かれます。
汚水系統ならば、ドレン用の排水管を汚水枡につないで排出します。
雨水系統は給湯器の位置と側溝が近い場合、排水管を伸ばして側溝に排出することも可能です。
また、雨どいに近い場合はドレン管を延長して雨どいに排出するか、簡易的な雨水浸透枡を設けてドレン水を排出する方法もあります。
本体価格が比較的高い
エコジョーズは、従来型の給湯器とは構造が異なるため本体価格が比較的高くなります。エコジョーズを製造販売する大手メーカー4社を比べたところ、希望小売価格に大きな差はありません。
1分間に16Lのお湯を作る「16号」は給湯専用で約16万円、フルオートで約34万円程度です。従来タイプに比べ、約7万円~8万円高いと考えておきましょう。
中和器の交換が必要になる
ドレン排水は、生成される段階で燃焼排気ガス中の微量成分が溶け込み酸性になるため、中和させる必要があります。
エコジョーズは中和器を備えていますが、一定期間が経過すると交換せねばなりません。
国土交通省が「潜熱回収型ガス給湯器等ドレン排水の取扱いについて」示した指針によると、エコジョーズで生成されたドレン排水はpH3程度の酸性ですが、中和器でpH7程度まで中和されて器外へ排出されるとしています。
給湯器内に備わった中和器は、酸性の排水を中和するための炭酸カルシウムが詰まっています。炭酸カルシウムが減るため、10年ほどで交換する必要があります。
中和器の交換にかかる費用は、約1万5,000円~3万円とされます。
なお、エコジョーズは中和器の機能低下や異常が発生したときのために安全装置が備えられています。万が一、安全装置が作動したときは中脇を交換および修理しなければ復旧できない仕組みになっています。
長期使用によって事前に設定した積算運転量に達した場合は、操作リモコンに表示されるとともに強制停止します。
ドレン排水自体は有害ではありませんが、中和器をはじめさまざまな対策が打たれているのです。
まとめ
エコジョーズを利用する世帯は年々増えており、2020年3月における累計出荷台数は約1,027万台にも上ります。SDGsの活動が進むなか、省エネタイプでCO2排出量を大幅に削減できるとありさらに普及することでしょう。導入を検討される際にこの記事がお役に立てば幸いです。
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