エアコンは日常生活には欠かせない冷暖房器具です。夏場は涼しく、冬は暖かな温度で快適な環境を提供してくれます。
このように私たちの生活に必要不可欠なエアコンですが、理想の取付位置があるのをご存じでしょうか。
本記事では、エアコンの理想的な取付位置と注意点について解説します。今回紹介する情報を参考にすれば、未経験の方でも適切な位置へエアコンを設置できるようになります。
エアコンの室内機設置の必須条件
エアコンは自由に思いのままに設置できるわけではありません。消防法や電気系統の関係で設置場所がある程度決まっているためです。
では、エアコンの設置場所はどのような条件があるのでしょうか。次項から設置条件を4つに絞って紹介します。
上下左右に一定のスペースを確保する
エアコンの室内機を設置する際は、一定のスペースが必要です。エアコンの効率的な動作と修理作業のスペースを設けるためです。
エアコンは周囲の空気を吸い込んで冷暖房に変換します。もしも十分なスペースが確保できなければ、エアコンが空気をうまく取り込めないため室内の温度調整が効率的におこなえません。
また、修理作業が可能なスペースがなければ定期的なメンテナンスや修理もできません。長期間手入れをせずに放置すると「ほこり」が溜まり、エアコン自体の性能低下や故障の原因につながります。
エアコン専用コンセントにプラグが届く
エアコンは専用コンセントに接続する必要があります。使用電力がほかの家電よりも大きく、通常のコンセントでは電力供給が足りないためです。
また、エアコンのプラグが届かない場合はコンセントに接続ができずにエアコンが作動しません。
専用コンセントがないときは新たに電源回路の設置が必要です。
配管用の穴より上にする
エアコンの配管には冷媒だけでなく、機器内部の水や汚れを排水する役割もあります。
もし室内機を配管穴よりも低い位置にすれば、排水がうまく外に流れず内部に滞留します。そのため、エアコンの効率が低下して故障のリスクを高めます。
エアコンの室内機を設置する際は配管用の穴よりも上に設置しましょう。
火災報知機から1.5m以上離す
日本では消防法により、住居に火災報知器の設置が義務化されています。
この火災報知器とエアコンが近すぎると、エアコンから出る熱によって誤作動するかもしれません。誤作動により不必要な火災報知や消防署への誤報が発生し、混乱につながる恐れもあります。
エアコンの室外機設置の必須条件
エアコンには心臓ともいえる重要な役割を担う室外機があります。室外機も室内機同様、好きな場所に設置できるわけではありません。ここでは、エアコン室外機の設置条件を解説します。
前後左右に一定のスペースを確保する
室外機の設置には、2つの理由から前後左右に一定のスペースを確保する必要があります。以下でくわしく解説します。
- 背面は5cm以上あける
室外機は背面から空気を取り込む仕組みです。背面から5cm未満の場所に設置すると、空気が取り込めず室外機本来の能力が発揮できません。
この影響により電気代の高騰や故障の原因になるため、設置場所を変更しましょう。 - 前面は25cm以上あける
室外機は前面から空気を排出します。前面に近接した障害物があると空気の排出ができないばかりか、故障の原因につながります。
直射日光や雨が当たりにくい場所にする
室外機に直射日光が当たると室外機自体が熱を持ってしまい、エアコンの消費電力が増加する恐れがあります。
また、雨ざらしの場所に室外機を設置するのも問題です。雨により室外機が錆びつく可能性があるためです。また錆の影響で内部に雨水が侵入して故障するリスクが高くなります。
室外機は直射日光や雨が当たりにくい場所を選んで設置しましょう。
音や振動が響きにくい場所にする
室外機は動作中に音や振動が発生するため、周囲に配慮した場所選びが求められます。騒音や振動で、地域住民に迷惑をかける可能性があるためです。
こうした音や振動の対策として、室外機専用の台座やゴムマットの上に設置する方法があります。これらの対策により、振動が吸収され騒音が軽減します。
室外機は音や振動が響かない場所が最適です。気になる方は、防音・防振対策を検討しましょう。
水平かつ安定して置ける場所にする
室外機を水平に設置するとエアコンは最も効率良く動作します。
逆に、傾斜があり不安定な状態では冷媒の流れが滞り、冷暖房の効果が低下してしまいます。また、室外機が不安的に設置されると振動や騒音の助長にもつながります。
周囲の方々に迷惑をかけないためにも、室外機は安定した位置で設置しましょう。
エアコンの室内機の理想的な取付位置
ここでは、エアコンの室内機の理想的な取付位置を5つの項目で紹介します。
室外機の近くに設置する
室外機と室内機間の距離が近いほど冷媒の流れがスムーズに行われ、エアコンの効率が向上します。
また、配管が短くなればエアコンの冷暖房効果も最大限に発揮されるため、電気代の節約にもつながります。
なお、当店の取付工事では配管の距離は4mが標準工事の範囲内です。
4m以上の配管距離にすると追加料金となりますので、ご注意ください。
長方形の部屋の場合は短辺にあたる壁に設置する
エアコンから出る風は、基本的に前方に向かって流れます。そのため、長方形の部屋であれば室内機を短辺にあたる壁に設置するとよいでしょう。
エアコンの風が部屋全体に均等に行き渡り、効率的な空気循環が実現されます。
窓の上に設置する
空気は温度が上がると上昇する特徴があります。この特徴を活かすため、窓上に室内機を設置することで上昇した暖かい空気がうまく取り込めるでしょう。
これにより、室内の高温な空気を効率よく排出し、冷たい空気との循環が可能になります。
障害物に当たらない位置に設置する
障害物があるとエアコンからの風が部屋全体に行き渡りません。
たとえば、室内機の近くに大きな家具などを設置すると、エアコンの風が家具に邪魔され空気が循環しなくなります。
室内機を設置するときは、空気の循環も想定した場所に設置しましょう。
フィルターの掃除がしやすい場所に設置する
フィルターはエアコン内部の異物やホコリを取り除き、清潔な空気を部屋に供給する役割を担っています。
定期的なフィルターの掃除はエアコンの効率を向上させ、エネルギーの節約にもつながります。
しかし、フィルターの取り出しができない場所に設置するとフィルターのメンテナンスができず、結果的にエアコンの性能低下や故障リスクを高める要因となります。
エアコンを取付する際は、フィルターの手入れができる場所を選んでから設置するようにしましょう。
エアコンの取付位置でよくあるトラブル
エアコンを設置する際、トラブルに遭遇する方は少なくありません。次項では取付時に起こりやすいトラブルを3つ紹介します。
取付位置に対してエアコンが大きすぎる
取付位置に対してエアコンが大きすぎる場合、設置できない問題が生じます。よくあるパターンとしては「エアコンの買い替え」です。
現在使用中のエアコンよりも大きいものを購入した場合、設置できずに返品対応となるケースもあります。
このようなトラブルを回避するには、コンパクトなサイズのエアコンを選ぶか、事前に寸法をよく確認することが重要です。
カーテンレールやドアなどの備品とぶつかってしまう
エアコンの取付位置でよくあるトラブルは、カーテンレールやドアなどが接触してしまうことです。
このような場合、エアコンが設置できない状況となります。こちらもエアコンのサイズと同様、事前に寸法を確認して設置可能なエアコンを選べば問題ありません。
配管穴が開けられない
エアコンが取付できない理由は、配管が関係する場合もあります。ここでは、配管穴が開けられないケースを3点紹介します。
鉄筋コンクリートなどで物理的に穴あけが困難なケース
マンションなどの集合住宅は、鉄筋コンクリート造の建物が多くあります。
これらの建物は法律に基づいた耐震強度を維持しているため、配管穴が開けられない場合があります。
管理会社やオーナーなどの許可が下りないケース
配管穴は、管理会社やオーナーの許可がないと開けられません。
築年数が経過している建物は、配管穴を開けると壁面強度が落ちる可能性があるので承認されにくいでしょう。
なお、管理会社や大家さんに許可なく配管穴を開けると、賠償責任を問われる可能性があります。自己判断で穴あけを依頼するのは避けましょう。
2006年8月以前着工の建物でアスベスト含有調査が必要なケース
2023年10月1日以降の工事から、法改正により穴あけや穴拡張を行う際に石綿(アスベスト)が使用されていないかの事前確認が必要になりました。
アスベストは2006年9月から製造・輸入・使用が禁止されていますが、2006年8月以前に着工された建物はアスベストを含んでいる可能性があります。
そのため、上記に該当する建物である場合はアスベストを含有しているかどうかの事前調査(有料)が必要です。
もし、アスベスト含有が認められた場合はアスベスト対策を前提とした特別な工事が必要になりますので、追加料金が高額になる可能性があります。
また、アスベスト含有調査やアスベスト含有建材への穴あけには、「建築物石綿含有建材調査者」「石綿作業主任者」などの有資格者による作業が必要になるため、資格を持っていない工事業者は作業自体ができません。
穴あけが必要な場合は、建物の着工年数を事前に確認しておきましょう。
まとめ
エアコンは私たちの生活を快適に過ごす上で、なくてはならない存在です。この冷暖房器具の能力を最大限発揮するには設置位置がとても重要です。そのため、今回はエアコンの設置位置について、初めての方でもわかりやすい内容で解説しました。
また、エアコンの設置に関するトラブルにも触れ、事前にトラブルを回避できるよう注意喚起も兼ねた情報を提供しました。これからエアコンの購入や買い替えを検討中の方は、今回の記事を参考にエアコンの取付おこないましょう。
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