テレビのアナログ放送が2011年に終了し、地上デジタル放送に完全移行しておよそ11年が経ちます。それまではアナログ放送を受診するため主にVHFアンテナを使っていましたが、地上デジタル放送を受診するには地デジアンテナとして使うUHFアンテナが必要です。
本記事では、地デジアンテナとして使うUHFアンテナの種類や選び方をはじめ、設置する際の注意点などについて詳しく解説します。
地デジアンテナとは
UHFアンテナは、アナログ放送だった時代にも使われていました。VHFアンテナは、電波のなかで周波数30MHz~300MHzのVHF帯を受診するアナログ放送に対応していました。それに対してUHF帯は、周波数が300MHzから3GHzの電波帯を指します。
地上デジタル放送は都内にそびえる東京スカイツリーをはじめ、主な地域に設置された大型送信所や各地にある中継局の地デジ電波塔によって送信している地上波放送です。現在、地デジ放送にはUHF帯のうち470MHzから710MHzまでの周波数帯を使用しています。地デジアンテナはUHFアンテナを用いているのです。
地デジアンテナの種類
地デジアンテナには大きく分けて「屋外用アンテナ」、「屋内・屋外兼用アンテナ」、「屋内用アンテナ」といった3つの種類があります。
屋外用アンテナ(八木式アンテナ)
屋根の上に魚の骨のようなトゲトゲした形状のアンテナが立っているのを見かけたら、それは「八木式アンテナ」です。八木秀次氏と宇田新太郎氏が1920年代に開発したことから、「八木・宇田アンテナ」とも呼ばれています。地デジ以前はVHFアンテナとして使われており、もっとも馴染みがあるアンテナといえるでしょう。
魚の骨のようなトゲトゲした形状の部分を「素子」と呼びますが、素子の数によって電波を受信する性能が変わります。
素子の数は「14素子」、「20素子」、「30素子」などがあり、一般的には20素子が使用されています。受信障害地域や電波の弱い地域では、「27素子」や「30素子」といった高性能型アンテナを必要とする場合もあります。
広く普及している八木式アンテナはほかのアンテナに比べて比較的安価に設置でき、受信性能が高いことがメリットです。
ただし、屋根の上に立てた際に目立つことから、景観が気になる方もいるようです。天候の影響を受けやすく、台風や積雪などによって破損するなどして受信できなくなる可能性がある点はデメリットといえるでしょう。
受信性能 | 高 |
アンテナ本体価格相場 | 2,000円~ |
設置場所 | 屋根上、軒下、屋根裏 |
設置所要時間 | 1〜2時間 |
工事費用 | 15,000〜30,000円 |
屋内・屋外兼用アンテナ(平面アンテナ/デザインアンテナ)
「平面アンテナ」や「デザインアンテナ」と呼ばれるタイプは箱形をしていて、建物の外壁に設置するのが特徴です。八木式アンテナのように屋根の上に立てないため、外観を気にする人はデザインアンテナを選ぶ傾向にあります。
大きさは、一例を挙げると590(高さ)mm×220(幅)mm×113(奥行)mm程度のため、場所をとらず軒下やベランダに設置することが可能です。スタイリッシュなデザインと、カラーバリエーションが豊富なことから家の景観に合ったものを選べることも魅力のひとつです。
屋内・屋外兼用アンテナは、「設置しても外観を損なわないことから選んだ」、「新築した家に合わせてスタイリッシュなアンテナにしたかった」という理由から選ばれるケースが多いようです。
また、屋根の上に設置する八木式アンテに対してデザインアンテナは壁に設置するため、暴風雨や積雪の影響が少ないことから天候の影響が少ないこともメリットです。 台風などの強風により、倒壊する心配がないと考えて屋内・屋外兼用アンテナを選ぶ方も少なくありません。
その他、屋根に太陽光発電を設置して八木式アンテナを立てられないことから、壁に設置できるデザインアンテナを選ぶことも考えられます。
受信性能 | 中 |
アンテナ本体価格相場 | 5,000円〜 |
設置場所 | 外壁、軒下、ベランダ、室内 |
設置所要時間 | 1〜2時間 |
工事費用 | 20,000〜35,000円 |
屋内用アンテナ
屋内用アンテナは、コンパクトな作りのアンテナとテレビをケーブルでつなぐだけで使用できる手軽さが特徴です。自分で設置する卓上タイプなので、ケーブルとつないで置く場所を決めるだけで使用が可能です。
アンテナ本体の価格も1,000円程度からあり、工事費はかかりません。ただし、ほかのタイプのアンテナに比べて電波の受信性能が低いのはデメリットです。
弱電界地域や建物が鉄筋コンクリートの場合、電波を受信できないこともあるため、購入前に設置エリアの電波状況をよく調べてから選びましょう。
受信性能 | 低 |
アンテナ本体価格相場 | 1,000円〜 |
設置場所 | 室内の卓上や窓際 |
設置所要時間 | 10分程度 |
工事費用 | なし(自分で設置するため |
地デジアンテナを選ぶ際の確認事項
設置する住宅の状況によって、どのようなタイプの地デジアンテナを選ぶべきかよく検討しましょう。持ち家に設置するか、賃貸住宅に設置するかも関係してきます。
持ち家の戸建てならば自分で自由に選べるので問題はありません。しかし、賃貸住宅で新たに地デジアンテナを設置する際は、八木式アンテナは屋根に設置する工事が可能か、平面アンテナ/デザインアンテナの場合は壁に穴を開けてよいか、住宅管理会社や大家さんに確認しておく必要があります。
工事や壁に穴を開けることが認められない場合は、ご自身で設置できる屋内用アンテナを使う方法があります。また、後々引っ越す可能性がある場合は、取り外して引っ越し先でも使えるアンテナを選びましょう。
地デジ放送の受診に関しては次のような点を確認しておくことが重要です。
地デジ放送の受信チャンネルの確認
転居先などで地上デジタル放送を受信するには、その地域の情報を取得するためチャンネル設定が必要です。テレビなどの地デジ放送受信機器と使用するアンテナをケーブルでつなぎ、テレビの説明書どおりにチャンネルスキャンします。
アンテナケーブルが正しく接続されているのに受信チャンネルが確認できない場合は、電波強度が弱い可能性が考えられます。アンテナの向きを調整し、受信電波を強くするためのブースターを用いるなど対応が必要なため、専門業者に依頼したほうがよいでしょう。
電波の偏波面の確認
地上デジタル放送は、地域によって放送波が異なります。地デジ放送の中継局によって「水平偏波」と「垂直偏波」の2種類があるため、地デジアンテナを新たに設置する際は、対象の地域の中継局がどちらの偏波なのかを事前に確認しましょう。
地面に対して水平偏波は水平に振動し、垂直偏波は垂直に振動します。UHFアンテナには水平偏波アンテナと垂直偏波アンテナがあります。中継局の偏波に対応したアンテナの方向を合わせて設置することで、効率よく受信することが可能です。
電界地域の確認
地上デジタル放送の電波は、テレビ塔の親局や中継局から距離が遠くなるほど弱くなります。地デジアンテナを設置した地点まで届く電波の強さによってエリアを分けたものが「電界地域」です。
電界地域は「強電界地域」、「中電界地域」、「弱電界地域」の3つがあり、アンテナを選ぶ目安となります。電波の強さの単位であるdB(デシベル)で表わすと、強電界地域(80dB以上)、中電界地域(60db以上)、弱電界地域(60db以下)に区別されます。
地デジアンテナを選ぶには、強電界地域の場合は受信効率がよいため「屋外用」、「屋内・屋外兼用」、「屋内用」のどのタイプでも対応可能です。
中電界地域は「屋外用」と一部で「屋内・屋外兼用」を使えます。テレビ電波の受信が難しい弱電界地域の場合は、「屋外用」を選んだほうがよいでしょう。
地デジアンテナは自分で設置はできるのか?
屋根に設置することが多い屋外用の八木式アンテナをご自身で取りつけようとした場合、屋根の上での作業を伴うため足を滑らせて落下してしまうおそれがあります。リスクを避けることからも、工事費用はかかりますが専門の業者に頼むことをおすすめします。
地デジ放送の電波塔や中継局に合わせてアンテナの向きを調整することで、きちんと受信できるようになります。そうした技術を持っている専門業者に設置を任せたほうが、安全性や受信精度を考えても納得できるでしょう。
平面アンテナ/デザインアンテナの場合は、屋根に上る必要はありません。ただし、壁に穴を開ける作業や、電波の受信ができるようにアンテナの向きを調整するため、やはり専門業者に依頼したほうがよいでしょう。
地デジアンテナを設置する際の注意点
もし自分で地デジアンテナを設置するならば、次のような点に注意しましょう。
建築物の影響が少ない場所に設置する
地デジアンテナが電波を受信するには、電波塔との間に遮蔽物がないことが理想的です。遮蔽物が全くない環境は無理だとしても、屋根の上など高いところに設置することが多いのはそのためです。
各チャンネルの受信レベルがそろう高さに設置する
地デジ放送用のUHFアンテナは、設置する高度によって受信できる電波レベルが強くなったり弱くなったりする「ハイトパターン」という特性を持っています。そのため、基本的には高所に設置することが望ましく、各チャンネルの受信レベルがそろうようにアンテナの高さを微調整しなければなりません。
最寄りの電波塔や中継基地へ向けて設置する
八木式アンテナやデザインアンテナを自分で取りつける際は、最寄りの電波塔や中継基地へ向けて設置することが重要です。
最寄りの電波塔などについては『一般社団法人放送サービス高度化推進協会(A-PAB)』公式サイトの「放送エリアのめやす」で検索できます。
必要に応じて分配器やブースターも併用する
地デジ放送を見るためにはアンテナを設置するほかに、電波が弱くて映りが悪いときに電波を増幅するブースターや、1つのアンテナから複数のテレビに電波を分配する分配器などを使用することもあります。
まとめ
今回は、地デジアンテナとして使うUHFアンテナの種類や選び方や設置する際の注意点について詳しく解説しました。
地デジアンテナにもさまざまな種類がありますが、八木式アンテナやデザインアンテナを用いて電波を効率よく受信することが重要です。設置エリアの環境などにより、工事やアンテナの調整などが必要となるため、設置する際は専門業者に相談することをおすすめします。
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