給湯器の寿命と交換時期の目安
給湯器は、メーカーが安全に使用できる期間として定めている「設計標準使用期間」があります。この期間を過ぎると経年劣化が進み、いつ壊れてもおかしくない状態です。
ここでは、給湯器の一般的な寿命や、買い替えを検討すべき適切なタイミングについて紹介します。
一般的な寿命は10年〜15年
家庭用給湯器の寿命は、おおむね10年〜15年が目安です。
ただし、給湯器の種類によって内部構造や使用環境が異なるため、耐用年数にも多少の差があります。以下の表に代表的な給湯器について、特徴や寿命の目安をまとめました。
| 給湯器の種類 | 平均寿命 | 特徴 |
|---|---|---|
| ガス給湯器 (一般的なモデル) |
約10年 (メンテナンス次第では15年程度まで使用可能) |
ガスの熱でパイプ内の水を加熱する仕組みで一般家庭で多く使われています。 多くのメーカーが「設計標準使用期間」を約10年と定めていますが、定期的な点検や部品交換を行えば、より長く使用できる場合もあります。 |
| 電気給湯器 | 約10〜15年 | 電熱ヒーターの熱でお湯を作る方式で、瞬間式と貯湯式があります。 オール電化住宅などで多く採用され、平均寿命は10〜15年ほどです。貯湯タンクやヒーターの耐久性により寿命は異なります。 |
| 石油給湯器 | 約8〜10年 | 灯油を燃料とするタイプで、パワーが強く光熱費を抑えやすいため寒冷地で広く普及しています。 日本ガス石油機器工業会では、屋内外を問わず寿命の目安を約10年としています。 |
設置から10年が買い替えのベストタイミング
給湯器の買い替えは、設置から10年を目安に考えておくと安心です。10年を過ぎても使い続けられる場合はありますが、多くのメーカーでは修理用部品の保有期間を「生産終了から約10年」と定めています。そのため10年の保有期間を過ぎると部品の入手が難しく、修理できないことがあります。
とくに冬場は給湯器の使用頻度が高く、トラブルが集中しやすいため、修理や交換工事までに時間がかかることがあります。突然故障してしまうと、慌てて交換を進めることになり、さまざまな機種を十分に比較検討できないこともあります。そのため、10年を目安に計画的に交換の検討をしましょう。
寿命が近い給湯器に見られる症状
給湯器は、使用環境や使用頻度にもよりますが、一般的に10〜15年ほどで寿命を迎えます。外見に変化がなくても、内部では部品の劣化や摩耗が進んでいることがあります。
もし次のような不調や異常が見られた場合は、寿命が近いサインかもしれません。放置すると火災やヤケドなどの思わぬ事故につながる恐れもあります。
お湯の温度が安定しない
給湯器の代表的な不調のひとつが、「お湯の温度が安定しない」という症状です。急にお湯が熱くなったりぬるくなったりする場合や、設定した温度どおりにお風呂が沸かない場合は注意が必要です。
原因としては、温度センサーや点火装置など内部の部品が経年劣化している可能性が考えられます。そのまま使い続けると、最終的にはお湯がまったく出なくなることもあります。
異音・異臭・黒煙などが発生する
給湯器から異音や異臭、黒煙などが発生する場合は、寿命が近い可能性があります。
運転中に聞き慣れない音がする場合は、内部のモーターや部品が摩耗・劣化していることが考えられます。また燃焼管がつまっている、あるいは点火装置に問題がある可能性もあります。
さらに、ガスのニオイや焦げたようなニオイ、酸っぱいニオイがする場合は、ガス漏れや燃焼不良などの危険な状態かもしれません。排気口の周りが煤で黒く汚れているときも、不完全燃焼の恐れがあります。
これらの症状が見られたら、すぐに給湯器の使用を中止して専門業者に相談しましょう。
本体や配管からの水漏れがある
給湯器の本体や配管から水漏れが見られる場合は、内部部品やバルブの劣化、破損が原因と考えられます。経年劣化によって接続部分が緩んだりひび割れたりすることで、水漏れが発生することがあります。
水漏れが起きると、お湯の出が悪くなったり水圧が弱まったりするほか、水道料金や光熱費が急に増えることもあります。とくに「水では問題ないのに、お湯にすると勢いが弱くなる」という場合は、給湯器内部の不具合が疑われます。
点火しにくい・リモコンエラーが出る
お湯を出そうとしても給湯器の点火に時間がかかる場合や、リモコンにエラーコードが頻繁に表示される場合は、給湯器の不調や寿命のサインかもしれません。
主な原因として、点火装置の劣化や内部への水分侵入、リモコンの経年劣化などが挙げられます。台風や大雨の後などに一時的に起こることもありますが、繰り返す場合は内部部品の故障が進んでいる可能性があります。
修理の回数が増加している
給湯器の不具合が頻繁に発生し、修理の回数が増えている場合は、交換を検討するタイミングです。古い給湯器は、修理しても別の箇所が故障することが多く、修理費用がかさむことがあります。
また、メーカーによっては使用から10年を過ぎると部品の製造が終了し、修理できなくなる場合もあります。症状が改善されない場合や、複数回・複数箇所の修理が必要になって費用が買い替え費用を上回ることもあるため、早めに交換を検討しましょう。
給湯器の寿命が過ぎたまま使うとどうなる?
寿命を過ぎた給湯器を使い続けると、安全面や経済面でさまざまなトラブルを引き起こす可能性があります。
ガス漏れ・一酸化炭素中毒など安全面リスクがある
給湯器の寿命を過ぎても使用を続けると、安全面において重大なリスクが高まります。
古くなった給湯器では内部部品の劣化により、水漏れやガス漏れが発生しやすくなります。これらの不具合を放置すると最悪の場合、火災や爆発などの事故が起こる可能性があります。
また、給湯器の不具合は不完全燃焼を引き起こすことがあり、一酸化炭素中毒の危険性もあります。一酸化炭素中毒は自覚症状がほとんどなく、気づかないうちに中毒が進行することもあるため非常に危険です。
修理費用が高額化する
給湯器の修理は、一時的には費用を抑えられるというメリットがあります。しかし、長年使用している給湯器は部品が劣化しているため、同じ箇所や別の箇所が次々と故障することも少なくありません。その結果、修理を重ねるうちに費用が高額になることがあります。
また、長く使用している給湯器は、新しい機種に比べて燃焼効率が低下しており、その分光熱費が高くなる傾向があります。内部の部品が劣化しているため、同じ量のお湯を沸かすのにも、より多くのガスや電気を消費してしまうのです。
お湯が出なくなるリスクがある
給湯器の寿命が過ぎたまま使い続けると、ある日突然お湯がまったく出なくなるケースもあります。お湯が使えなくなると、お風呂やシャワーを使えないことはもちろん、洗い物などの水仕事もすべて冷水で行う必要があり、日常生活に大きな支障をきたすでしょう。
繁忙期に壊れると交換が間に合わないケースがある
給湯器をよく使うのは、気温が下がる秋から冬にかけての時期です。そのため、10月〜2月頃は給湯器交換の繁忙期となり、業者の予約が取りづらく、製品の取り寄せにも時間がかかることがあります。
この時期に給湯器が故障すると、「すぐに直したい」と思っても、状況の確認や部品の取り寄せ、新品への交換準備などに時間を要します。そのため、修理や交換が長引いてしまい、お湯が使えない状態が続くことが考えられます。
給湯器の故障は、修理と交換どちらを選ぶべき?
給湯器が故障した際、「修理」と「交換」のどちらを選ぶべきか迷う方は多いでしょう。
修理費は、故障箇所の部品代に加えて出張費・技術料などがかかり、数千円〜数万円程度が一般的です。一方、交換費用は機種や設置条件によって異なりますが、12万〜35万円前後(工事費込み)が目安です。
以下は、修理と交換の費用目安を比較した表です。
| 修理費 (出張費・技術料・部品代込みの目安) |
交換費 (工事費込みの目安) |
|---|---|
| 燃焼系:17,000〜33,000円 電装系:6,000〜46,000円 安全装置系:7,500〜58,000円 水制御系:10,000〜35,000円 |
ガス給湯器:12万〜20万円 石油給湯器:15万〜30万円 電気温水器:20万〜35万円 |
【修理が向いているケース】
- 使用年数が5年以下で、不具合が軽微な場合
- メーカー保証や販売店の長期保証の対象期間内である
これらの条件なら、修理費用が交換よりも安く済む可能性が高く、修理を選ぶメリットがあります。
【交換が向いているケース】
- 設置から10年以上経過している
- 修理費が高額、または故障やエラーが頻発
このような場合は、思い切って新品に交換したほうが、将来的な修理リスクやランニングコストを減らせるため、結果的にお得になるケースが多いです。
給湯器が故障したら、使用年数を目安に修理か交換かを判断するとよいでしょう。
給湯器を交換する場合の業者の選び方
給湯器を交換することになった場合は、実績や対応力、保証内容など、複数の観点から交換依頼業者を比較検討することが大切です。
信頼できる業者かどうかを確認する
給湯器の交換工事を安全に行うためには、資格や実績をチェックすることが大切です。
給湯器の設置には「給水装置工事主任技術者」「電気工事士」など、専門資格が必要な作業を伴う場合があります。資格を持つスタッフが対応している業者であれば、施工品質や安全性の面で安心です。
また業者の実績や評判も確認しましょう。公式サイトで施工事例を見たり、口コミサイトで利用者の評価を調べたりすることで、技術力や対応力を把握できます。
複数の業者の見積もりを比較する
給湯器の交換費用は、本体の性能や機能だけでなく、設置条件や工事内容によっても変わるため、複数の業者から見積もりを取って総額を比較することが重要です。
相場よりも大幅に高い金額はもちろん、安すぎる見積もりを提示する業者にも注意が必要です。工事開始後に高額な追加料金を請求されたり、作業の質を下げてコストを抑えたりする悪質なケースも見られます。
見積もり書を確認する際は、給湯器本体価格と工事費がそれぞれどのように算出されているかをチェックしましょう。
アフターサービス・保証内容を確認する
給湯器の交換は、メーカー保証のほか、業者独自の工事保証が適用されることもあります。
交換直後に不具合が起きた場合でも、保証内容がしっかりしていれば無償で修理や交換を受けられるため、事前に保証期間や対象範囲を確認しておきましょう。
また、アフターサービスの体制が整っている業者を選ぶことで、トラブルにも安心して対応できます。契約前にサポート内容や連絡窓口を確認し、万一の際にすぐ相談できる体制が整っているかをチェックしましょう。
工事日程や対応スピードで選ぶ
給湯器が故障すると日常生活に支障をきたすため、迅速に対応できる業者を選ぶことが重要です。問い合わせから工事実施までのスピード感や、給湯器の在庫が十分に確保されているかを確認しておきましょう。
また、見積もり依頼や問い合わせ時の連絡の早さや対応の丁寧さも見極めるポイントです。やり取りがスムーズな業者であれば、工事後のトラブル対応も安心して任せられます。
対応できる給湯器の種類で選ぶ
給湯器にはガスや石油、電気温水器など複数のタイプがあり、設置環境(屋内・屋外・戸建て・集合住宅)によっても必要な工事内容が変わります。依頼前に、自宅の設置条件に対応できる業者かどうかを確認しておくことが重要です。
また、業者によって扱っている機種やメーカーも異なるため、希望するメーカーの給湯器を豊富に取り揃えているかもチェックしましょう。
補助金・助成金の活用ができる業者を選ぶ
給湯器の交換は、条件を満たすことで国や自治体の補助金・助成金制度を利用できる場合があります。対象となる機種や金額は制度によって異なるため、自分の住む地域で利用可能な制度を確認することが大切です。
ただし、補助金の申請には、対象給湯器の選定や書類準備などの手続きが必要のため、申請をサポートしてくれる業者を選ぶと安心です。
給湯器を長持ちさせるためのコツ
家庭用ガス給湯器の平均寿命は一般的に10年〜15年ですが、使用頻度が高く長時間の利用が続くと、一般的な寿命よりも早く劣化が進むことがあります。一方で、丁寧に使用し、定期的な点検や清掃を行えば、寿命を延ばすことも可能です。
定期点検・フィルター掃除をする
給湯器を長く安全に使うためには、定期的な点検とフィルター掃除が重要です。多くの不具合は経年劣化によるものですが、使用方法やメンテナンス不足によって劣化が早まることもあります。早めに小さな不具合を発見して対処すれば、給湯器への負担を減らし、長期的には修理費用の節約にもつながります。
日常の簡単なお手入れでもトラブルを防げます。外装のほこりを拭き取ったり、排気口や吸気口のゴミを取り除いたりしながら、異音や異臭、水漏れなどの異常がないか確認する習慣をつけましょう。
追い焚き配管清掃をする
追い焚き配管は、水アカや皮脂汚れなどが付着しやすいため、定期的な清掃が必要です。追い焚き機能は、浴槽のお湯を吸い込んで再加熱して戻す仕組みのため、使用頻度が高いほど汚れがたまります。配管が詰まるとお湯の循環が悪くなり、追い焚きが途中で止まることもあります。
汚れを取り除くには、風呂釜用の洗浄剤を使う方法が効果的です。また、配管洗浄機能が付いている給湯器であれば、自動洗浄機能を活用できます。週に1回程度を目安に、こまめに清掃・メンテナンスを行いましょう。
長期間使わないときの凍結対策をする
寒冷地では、冬場に配管内の水が凍って膨張し、給湯器本体や配管が破裂する恐れがあります。気温が氷点下になるだけでなく、旅行などで長期間使用しない場合も、水が配管内で動かず凍結しやすくなるため注意が必要です。
多くの給湯器には、外気温が下がると自動で作動する凍結予防ヒーターや、追い焚き配管内の水を循環させて凍結を防ぐ機能が備わっています。ただし、これらの機能は電源が入っているときのみ有効なため、寒い時期は電源を切らないことが重要です。
また、長期間使用しない場合は、給湯器内部の水を抜いておくことも重要です。給湯配管には保温材を巻くなどの対策を行い、凍結による破損リスクを最小限に抑えましょう。
給湯温度を高く設定しすぎない
給湯器が寿命より早く故障する原因のひとつが、過度な負担です。給湯温度を極端に高く設定すると、内部の部品や配管に大きな負荷がかかり、劣化を早めてしまうことがあります。
季節に合わせて適切な温度を設定することで、負担を軽減し長持ちさせられます。目安としては、春・秋は38〜42℃、夏は35〜40℃、冬は42〜48℃がおすすめです。無理のない温度設定を心がけましょう。
まとめ
給湯器はおおむね10〜15年が寿命の目安とされており、長く使うほど内部の劣化が進んでいきます。お湯の温度が安定しない、異音や異臭がする、水漏れがあるといった症状が現れた場合は、早めに専門業者へ相談することが大切です。
修理で対応できるケースもありますが、設置から10年以上経過している場合や不具合が繰り返し起こる場合は、交換を検討しましょう。
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