照明を選ぶうえで外せないのが、LED照明の「演色性」です。照明の演色性とは、照明で照らしたときの物がどのぐらい自然光に近い色に見えるか表した指標です。
とはいっても、演色性についてあまり知らない方も多いでしょう。
そこでこの記事では、LED照明の演色性について詳しく紹介します。高演色LEDのメリットや使用時の注意点も紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください
LED照明の演色性とは
LED照明の演色性とは、照らす光源で色の見え方が変わる性質のことです。たとえば、同じ白色の物でも、光源によってはクリーム色に見えたり真っ白に見えたりと違う色に見えることがあります。
演色性は「Ra(平均演色評価数)」という単位で表現され、自然光とのズレがないほど数値が高くなります。具体的には80以上であれば演色性が高く、Ra100は自然光と同じ色です。反対にズレが大きいと数値が小さくなり、演色性が悪いと評価されます。
つまり、自然光とは見え方が大きく異なるという意味です。演色性が高い照明は見栄えが重要な料理やインテリアを美しく見せてくれます。
演色評価数の評価方法
先述したとおり、演色性は「演色評価数」の数値で評価されます。演色評価数は、JISで定められた15種類の色表をもとに評価されます。
ここでは、演色評価数の評価方法を「平均演色評価数」と「特殊演色評価数」の2つに分けて見ていきましょう。
平均演色評価用(No.1~8) | No.1 | No.2 | No.3 | No.4 | No.5 | No.6 | No.7 | No.8 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
特殊演色評価用(No.9~15) | No.9 | No.10 | No.11 | No.12 | No.13 | No.14 | No.15 | |
赤 | 黄 | 緑 | 青 | 西洋人の肌色 | 木の葉の色 | 日本人の肌色 |
平均演色評価数(Ra)
平均演色評価指数(Ra)とは、光源の演色性を評価するものです。JISで定められたNo.1〜No.8の色表と自然光のズレを評価しています。
たとえば、ある照明器具と自然光が当たったときの色彩がまったく同じに見える場合、その光源(照明)のRaは100になります。一般的に光源のRaは80以上あればよい評価といえます。
特殊演色評価数(Ri)
特殊演色評価数は、先ほど紹介した平均演色評価数の色に加えて、赤、黄色、緑、青、西洋人の肌色、木の葉の色、日本人の肌色という生活で重要な色に対する評価をしたものです。
まとめると、平均演色評価数も特殊演色評価数のどちらも光源がどのぐらい自然光の色を再現できているか数値化したものです。注意点として、評価数の高さと人が感じる色の好みは比例しません。
演色性の5つの種類
演色性は「普通形」と「高演色系クラス1〜4」に分けられ、それぞれの種類ごとで推奨用途が異なります。
演色性の種類とそれに対する平均演色評価数の最低値、それぞれの推奨用途をまとめた表は以下のとおりです。
演色性の種類 | 平均演色評価数(Ra)の 最低値 |
推奨用途 |
---|---|---|
普通形 | 60 |
|
高演色形クラス1 | 80 |
|
高演色形クラス2 | 90 |
|
高演色形クラス3 | 95 |
|
高演色形クラス4 | 95 |
|
普通形
普通形のRaの最低値は60以上です。推奨用途は屋内での精密な視作業を除く、作業全般です。具体的には倉庫室や電気室などでの視作業、屋外での電気設備の点検・修理などが当てはまります。
さらに屋内・屋外でのスポーツも適しています。日常生活においても、普通系の演色性で大きな問題はないでしょう。
このような環境下では、非常に強い光を出せる「メタルハライドランプ」や高い演色性を実現できる「高効率形蛍光灯」が使用されています。
高演色形クラス1
高演色形クラスは、1〜4に分類されています。高演色形クラス1のRa(平均演色評価数)の最低値は80以上です。主な用途は学校における授業、屋内でのやや精密な作業、工場内での組立作業などが挙げられます。
このような環境下では、白熱電球に似た温かみのある光を発する「高演色形高圧ナトリウムランプ」や「高効率・高演色形蛍光灯」といった従来型の照明器具が使用されています。
高演色形クラス2
高演色形クラス2のRa(平均演色評価数)の最低値は90以上です。主な用途は美容室や色の見え方が重視される作業、病院での診療室などが挙げられます。
高演色形クラス2は相手の顔を見て行うコミュニケーションを取る必要がある仕事や、見栄えが重要な仕事に適しています。
このような環境下では、「メタルハイドランプ」や色を忠実に再現する「高演色形蛍光灯」が使用されています。実際、病院の診察室では高演色形蛍光灯が使われています。
高演色形クラス3
高演色形クラス3のRa(平均演色評価数)の最低値は95以上です。主な推奨用途は作品が展示される美術館、博物館などが挙げられます。Raが95と非常に高いことから、展示物を鮮明に見せることができます。
ただし、展示物が照明の光で黄色く変色する恐れもあります。展示物へのダメージが考慮される場合は、白色や温白色の照明が使用されます。実際、照明の光によるダメージを抑えるために、暗めの照明にしている美術館・博物館は珍しくありません。
高演色形クラス4
高演色形クラス4のRa(平均演色評価数)は、先ほど紹介した高演色形クラス3と同じく95以上です。主な使用用途は印刷物や染色布、塗装物での色の比較や、色検査の作業が挙げられます。
いずれも色の再現度が求められる場面で推奨されます。物体の表面色を視感で比較する場合は、昼光色または昼白色が望ましいとされています。
高演色LEDを選ぶメリット
LEDといっても、製品ごとで演色性の高さは異なります。用途によって適した演色性は異なり、それぞれの色の見え方に違いがあります。LED照明を選ぶ際は演色性も重視しましょう。
高演色LEDのメリットは、自然光と比較した際に物の色のズレが少なく鮮明に見えることです。たとえば、飲食店や美術館では高演色LEDを使えば食べ物や作品が鮮やかに見えます。
アパレルショップや美容室においても、高演色LEDのほうがデザインや完成形を綺麗に見せることが可能です。高演色LEDによって、消費者の興味を惹きやすくなるでしょう。
高演色LEDを使用における注意点
高演色LEDは物を鮮やかに見せるメリットがある一方で、以下の注意点があります。
- 消費電力に対して光束が低くなる
- 一般的なLEDに比べて値段が高い
- 色が綺麗に見えるかは別の話
高演色LEDを使用すれば商品をきれいに見せたり、食品を鮮やかに見せたりできるため、消費者の反応もよいものになる可能性があります。実際、飲食店や美容室などでは平均演色評価数が高い照明を使用する傾向にあります。
ただし、高演色LEDは従来の蛍光灯や電球と同じように、消費電力に対して光束が低くなるデメリットがあり注意が必要です。
光束とは、光源全体の明るさを示すものです。そもそも光源からはいくつもの光の線が出ており、これらの束を光束といいます。
光束の単位記号は「ルーメン」で統一されており、ルーメンの数値が高いほど光は明るくなり、反対にルーメンの数値が低ければ低いほど、暗くなります。必要な明るさは用途や環境で異なるため、あらかじめ確認しておくとよいでしょう。
また、高演色LEDは通常のLEDよりも、価格が高い傾向にあります。事務所や店舗全体の照明を高演色性のLEDにする場合は、通常のLEDよりも予算を多く見積もる必要があるでしょう。
さらに、高演色LED=万人が好むよい色とは限りません。そもそも高演色LEDとは色を忠実に見せるものであり、対象のものが実際よりも綺麗に見せられるかどうかは別の話です。そのため、演色評価数が低くてもそちらのほうが好みと感じる人もいるでしょう。
まとめ
本記事では、LED照明の演色性について紹介しました。LED照明の演色性とは、光源に応じて色の見え方が変わる性質のことです。そして演色性は「平均演色評価数」という単位で表現され、数値が100の場合は太陽光時と同じ見え方ができています。反対に数値が低くなればなるほど、太陽光とのズレが大きいことを意味しています。
平均演色評価数が高いほど料理を美味しそうに見せたり、洋服を美しく見せたりできます。80以上が高いと評価されるのが基本です。まずは、用途を明確にするとRaの最低値もわかってくるでしょう。ただし、平均演色評価数の高さと色の好みは比例しないため注意してください。
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