現代では、世界中で自動車の「電動化」が進んでいます。電気自動車(EV)をはじめ、プラグインハイブリッド車(PHEV)が注目されていますが、どちらも自宅で充電できることをご存知でしょうか。自宅で充電するには費用がかかり、設置に手間がかかるイメージがあるかもしれませんが、EV・PHEV充電用コンセントなら手軽に費用を抑えて設置できます。
今回は、充電用コンセントの種類や注意するべきポイント、充電用コンセントを設置するメリットなどを詳しく解説します。ぜひEV・PHEV充電用コンセントを検討する際は参考にしてください。
EV・PHEV充電用コンセントとは
EV・PHEV充電用コンセントは電気自動車(EV)をはじめ、プラグインハイブリッド車(PHEV)を充電するため使う専用のコンセントを指します。充電設備の中でも比較的手軽で導入しやすい設備のため、戸建て住宅などの壁面に設置されています。
電気自動車の充電は、大型の商業施設や高速道路などの充電スポットで行うものと思っている方が多いかもしれませんが、それらは主に長距離移動する際の「補給」を目的に使われることがほとんどです。
充電コンセントには「100V」と「200V」がある
充電用コンセントには「100Vコンセント」と「200Vコンセント」の2種類のタイプがあります。
一般的に設置されているのは「200Vコンセント」です。電気自動車の大容量バッテリーを充電するには、出力が大きくないと時間がかかりすぎてしまうためです。
200Vの充電用コンセントの出力目安は3.0kWです。
たとえば、バッテリー容量が30kWhの電気自動車をおよそ10時間で満充電できます。帰宅後に車を充電用コンセントとつなぐと、翌朝には満充電になっている計算になります。
一方、100Vコンセント場合、出力は0.6~1.2kW程度と200Vコンセントの半分以下になるため、10時間充電しても半分にも満たない計算になります。
充電速度は、充電器や充電用コンセントの出力(kW)の数値が大きいほど速くなりますが、100Vコンセントでは出力が低くなってしまいます。
また、「電気代がかかるのでは」と思われがちですが、実はガソリンと比べて電気代は約1/2以下のコストで済むといわれています。さらに、夜間の電気代が安い時間に充電を行えばより維持費も抑えられ、自宅で手軽に充電できるのがEV・PHEV充電用コンセントです。EV普通充電には「スタンド型」もある
戸建て住宅などの個人宅には設置の簡単なコンセント型が主流ですが、マンションや商業施設には管理のしやすいスタンド型が一般的です。
自宅からの距離を気にせず自由に場所を選んで設置できるため、家から駐車場が離れた場所にある場合でもスタンド型なら使用できます。
最近では、宿泊費施設やオフィスビルの駐車場など滞在時間が長いところに設置されるケースも増えています。
EV・PHEV充電用コンセントの使い方
EV・ PHEV(電気自動車)の充電ケーブルの差し込み口を「充電口」「充電ポート」「インレット」などと呼びます。
メーカーにより多少異なりますが、主に電気自動車の充電口はふたつ用意されていることがほとんどです。
普通充電用は小さい充電口、急速充電用は大きい充電口になっています。
ただし、小さい電池容量の電気自動車をはじめ、小型の電気自動車の一部車種は普通充電の充電口しか用意していない場合もあります。普通充電の場合は車両に付属している、またはオプションで購入した車載充電ケーブルを使って充電します。
ケーブルの片側コネクターを車に差し込み、もう片側のプラグをコンセントに差し込んで充電します。普通充電と同じく、急速充電も設備に充電ケーブルとコネクターが付いていて、それぞれを車両に差し込んで充電を行います。
EV・PHEV充電用コンセントを設置するメリット
これから電気自動車(EV・PHEV)の購入を考えている方や、まだ買い替える予定はないけれど電気自動車が気になっている方は、充電用コンセントを設置する必要があるのかどうか、メリットはあるのかお悩みの方は多いでしょう。次は自宅にEV・PHEV充電用コンセントを設置するメリットを解説します。
設置費用を抑えられる
充電設備の選択肢はいくつかありますが、充電用コンセントを選ぶ最大のメリットは設置費用が安いことです。とくに製品自体の価格は安価です。コンパクトな設備のため設置場所の確保も比較的しやすく、大がかりな工事は必要ありません。比較的、手軽に低コストで導入できるのが、EV・PHEV充電用コンセントの魅力です。
充電用コンセントは、3000円台から1万円程度で手に入れることができます。この価格は、導入費用を抑える意味で非常に魅力的です。
分電盤からコンセントの設置場所までの配線の長さなどの設置条件により変動しますが、充電用コンセントの工事も比較的簡単で、工事費を含めた費用の目安は10万円前後と考えるといいでしょう。
新築の場合は、はじめから外壁の仕様として取り付ければ新たに穴を開ける必要がないため、後付けで設置するよりトータルの工事費用はさらに抑えられます。
EV充電以外の用途でも使える
EV・PHEV用充電コンセントは、一般的な屋外用電源としても使えます。庭で屋外グリルを使ってバーベキューをするときや、クリスマスやハロウィンなどの電飾、防犯灯・防犯カメラの設置の際など屋外電源があればスムーズに使用可能です。また、車を洗うときに高圧洗浄機を使う場合や業者に何か外構工事を依頼する際など、屋外電源として役に立つことはたくさんあります。
EV・PHEV充電用コンセントを設置するデメリット
たくさんのメリットがあげられるEV・PHEV充電用コンセントですが、設置を考えるならデメリットがあることも理解したうえで検討したほうが、のちのち困ることはありません。ここではEV・PHEV充電用コンセントを自宅に設置するデメリットを紹介します。
車載ケーブルの持ち運びや管理が必要
充電用コンセントは「車載充電ケーブル」を利用して充電します。車載電源ケーブルは、車種ごとに異なるので持ち運ぶ必要があります。
車載ケーブルの抜き差しに手間がかかる
基本的には充電のたびに、電源プラグを充電用コンセントに、充電用コネクタを充電口(普通充電用)にそれぞれ接続して充電をする必要があります。
車種によって充電口の位置が異なり、ガソリン給油口も付いている場合はさらに複雑になります。
車載ケーブルは車種ごとに専用品であること
車載充電ケーブルは車種ごとに異なる専用品のため、長さがそれぞれ異なるので注意が必要です。
設置する充電用コンセントの高さや種類によっては、コントロールボックスがコンセントを取り付ける壁に干渉してしまう可能性があります。充電用コンセントの設置工事を行う前に、ケーブルの長さを確認しておくことが重要です。
EV・PHEV充電用コンセントを設置する際の注意点
比較的手軽に設置できるEV・PHEV充電用コンセントですが、充電用コンセントを設置する際におさえておきたい注意点がいくつかあります。
いよいよ電気自動車を購入しようと思っても、知らなかったことで問題が起きてしまっては手遅れになってしまいます。事前に注意点をチェックし安心して設置できるようにしましょう。
設置には「第二種電気工事士」以上の資格が必要
充電設備の設置工事を行うには、「第二種電気工事士」以上の資格を持っていなければ設置はできません。「電気工事は、定められた資格を持つ人以外は原則行ってはならない」と法令で定められています。電気工事は感電事故や漏電による火災などにつながる恐れがあるため、専門的な知識と正確な技術が必要です。充電用コンセントの設置工事は自分でやろうとせず、必ず資格を持つ施工業者に依頼しましょう。
自宅の環境に応じて、工事のレベルが変わる
自宅の設置環境により、工事の内容やそれに伴う費用が大きく変わってきます。充電設備の設置を行う場合、設置環境を確認しておくことや、施工業者に事前に見積もりを取ってもらうことがおすすめです。
また、充電設備を設置できるのは、戸建てであることが基本になります。マンションなど集合住宅の場合はオーナーや管理会社の同意がなければ設置することはできないため確認をする必要があります。
契約アンペア数を見直しておく
EV・ PHEV(電気自動車)を充電するには、基本的に普通のご家庭で使っている電力に比べて出力が大きいです。契約アンペア数を超えるとブレーカーが落ちてしまいます。設置するタイミングで、契約アンペアの見直しをすることをおすすめします。
目安として、200Vで充電する場合は最大出力3kWになるため電力プランにおける30アンペアに相当が一般的です。契約アンペア数の変更は、自身で電力会社へ依頼する必要があります。
まとめ
電気のみで走るEV(電気自動車)は、二酸化炭素を排出しないエコカーです。近年の環境問題に配慮し、EV・PHEVは今後さらに普及が拡大されると考えられています。EV・PHEVの普及とともに各家庭に充電設備を設置することは、今後ますます一般的になっていくことは明らかです。
EV・PHEV充電用コンセントは、今後電気自動車の購入予定または検討中の方にとって、もっとも手軽に導入できる充電設備のひとつです。製品自体の価格も設置費用も比較的低コストに抑えられ、ガソリンと比べても燃料費は安くすみます。
充電用コンセントを設置しておけば、屋外用電源として利用できるのも魅力的なポイントです。
今後のことを考えるとメリットが多いEV・PHEV充電用コンセントですが、メリット・デメリットの両方を理解したうえで導入されることをおすすめします。設置後に聞いた話と違ったと後悔が残ることを避けるためにも、事前にEV・PHEV充電用コンセントについて調べておくと安心です。EV・PHEV充電用コンセントを選ぶメリット・デメリット、注意点も押さえたうえで施工業者とよく相談し充電設備を選びましょう。
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